日産がカルソニックカンセイ株の売却を検討
日産が系列の最大手部品メーカーであるカルソニックカンセイの全株式の売却を検討しているとのこと(2016・5・24日経新聞)。
株式の売却額は1,000億円程度になり見込みだとか。
自動運転車の登場により、自動車メーカーが必要とする部品や技術が大きく変化してきているため、資金をを先端技術に投入するのだそうです。
既存車の部品ニーズは頭打ちに?
日産は、先進国ではガソリン車やディーゼル車の部品需要は中長期的に頭打ちになると見ています。
こうした部品は、製品ライフサイクルで言うところの、成熟期後半~衰退期とみなされている、ということですね。

今回はカルソニックカンセイの株式を売却し、その資金を新たに新分野に投入をします。
資金はEVや自動運転のAIへ投入
世の中の動向としては、今後はEVや自動運転の技術がどんどん実用向けに動いています。
これらの技術は、製品ライフサイクルでいうところの「導入期~成長期」ですね。
大きな波が来ていますので、これに乗らずにはいられません。
日産も、カルソニックカンセイの株式売却で回収した資金は、これらの技術、EVや自動運転の性能向上に役立つAIの分野での提携や技術開発に投入するとのことです。
こうした動きは、いわゆる「経営革新」的な動きでもあります。

企業は発展し、成熟期を迎え、やがて衰退をしていきます。
成熟期を過ぎた段階で、何もせずに手をこまねいていれば、いずれは廃業、倒産といった事態になります。
そうなる前に、早い段階で手を打ち、新たな成長を作るのが経営革新です。
日産の動きもこのような動きであるといえます。
市場のシグナル
なお、今回の株式売却の話は「検討」段階です。
このような情報が出てきたことは、市場のシグナルとして捉えることもできます。
ポーター教授の「競争の戦略」でも、市場のシグナルについて書かれています(新訂「競争の戦略」P109~)。
その中の一つの項目として、
- 自社の動きについてのコメントと説明
があります。
この項目では、こうした動きは、
意識的にか無意識的にかは別にして・・・その動きの必然性を他社に納得させ、その動きに追従させるか、あるいは、その動きを挑発と受け取らせないようにする役割を果たす
という効果があると書かれています。
さて、日産の今回の動きの場合、どうでしょうか?
日産のような大手企業がこのような発表をすることにより、世の中の多くの企業はこれからの産業の方向性を感じ取り、その方向に向けてより強く動き出す効果があるのではないでしょうか?
今後、EV・自動運転・AIの開発がより一層加速する
日産がカルソニックカンセイの全株式売却を「検討」しているという今回の発表により、今後はEV・自動運転・AI・IoTといった、先端技術の開発、高度化、実用化がより一層加速して進んでいくことでしょう。
