価格は粗利に大きく影響をします。
今回は、戦略的な会計で、自社で取り扱っている商品のうちの、どれを値上げするべきかについて検討しましょう。
値上げするなら、どれにしますか?
あなたは、いろいろな商品を販売している企業を経営しています。
最近、利益が十分に出ず、経営が芳しくありません。
そこで、一部の商品の価格を10%値上げする交渉を取引先にすることにしました。
さて、取り扱っている商品のうち、どの商品について交渉したらよいでしょうか?
100種類の商品のうち、10品目を値上げするならどれにしますか?
こんなケースがあったとしましょう。
しかし、商品がたくさんあると、考えるのも大変ですね。
今回は、話を簡単にするために、
- 値上げをしても販売数量は変わらない
- 2タイプの商品だけを取り扱っている
ことにしましょう。
ケース1:販売数量と粗利がそれぞれ同じ場合
さて、取り扱っている商品が次のような2タイプだった場合を考えてみましょう。
販売数量は同じにしてあります。
ケース1
商品A:
- 価格 500円
- 販売数量 40個
- 変動費 300円(1個当たり)
商品B:
- 価格 600円
- 販売数量 40個
- 変動費 400円(1個当たり)
この場合、それぞれの粗利は以下のようになります。
商品A:
粗利=(価格ー変動費)×数量
=(500-300)×40
=8,000円
商品B:
粗利=(価格ー変動費)×数量
=(600-400)×40
=8,000円
どちらの商品も粗利額は8,000円で同じですね。
今回のケースは、販売数量と粗利がそれぞれ同じ場合、ということができます。
10%の値上げをした場合を下の図で表します。

商品A、Bそれぞれを10%値上げした場合の粗利の変化を計算してみましょう。
商品A:
価格 500円 ⇒ 550円
粗利=(価格ー変動費)×数量
=(550-300)×40
=10,000円
粗利の増加=値上げ後ー値上げ前
=10,000-8,000
=2,000円
商品Aは、10%の値上げにより粗利が2,000円増えることがわかりました。
商品Bも計算をしてみましょう。
商品B
価格 600円 ⇒ 660円
粗利=(価格ー変動費)×数量
=(660-400)×40
=10,400円
粗利の増加=値上げ後ー値上げ前
=10,400-8,000
=2,400円
商品Bは、10%の値上げによって粗利が2,400円増えることがわかりました。
ケース1の場合、10%値上げをした場合の粗利の増加は、商品Aが2,000円、商品Bが2,400円です。
もし、片方の商品だけしか値上げできないとするならば、商品Bの値上げをする方が得策です。
ケース2:販売価格と粗利がそれそれ同じ場合
さて、今度は取り扱っている商品が次のような2タイプだったらどうか、考えてみましょう。
なお、販売価格は同じになっています。
ケース2
商品A:
- 価格 600円
- 販売数量 40個
- 変動費 400円(1個当たり)
商品B:
- 価格 600円
- 販売数量 20個
- 変動費 200円(1個当たり)
この場合、それぞれの粗利は以下のようになります。
商品A:
粗利=(価格ー変動費)×数量
=(600-400)×40
=8,000円
商品B:
粗利=(価格ー変動費)×数量
=(600-200)×20
=8,000円
今回も、ケース1と同様に、どちらの商品も粗利額は8,000円で同じですね。
今回のケースは、販売価格と粗利がそれぞれ同じ場合、といえます。
ケース2で価格を10%上げると、下の図のようになります。

さて、商品A、Bそれぞれを10%値上げした場合の粗利の変化を計算してみましょう。
商品A:
価格 600円 ⇒ 660円
粗利=(価格ー変動費)×数量
=(660-400)×40
=10,400円
粗利の増加=値上げ後ー値上げ前
=10,400-8,000
=2,400円
商品Aは、10%の値上げにより粗利が2,400円増えることがわかりました。
商品Bも計算をしてみましょう。
商品B
価格 600円 ⇒ 660円
粗利=(価格ー変動費)×数量
=(660-200)×20
=9,200円
粗利の増加=値上げ後ー値上げ前
=9,200-8,000
=1,200円
商品Bは、10%の値上げによって粗利が1,200円増えることがわかりました。
ケース2の場合、10%値上げをした場合の粗利の増加は、商品Aが2,400円、商品Bが1,200円です。
もし、片方の商品だけしか値上げできないとするならば、商品Aの値上げをする方が断然お得です。
粗利が同じでも、状況によって値上げの影響は異なる
さて、上記の2つのケースは、以下のような2つのタイプでした。
ケース1:販売数量と粗利がそれぞれ同じ2つの商品
ケース2:販売価格と粗利がそれぞれ同じ2つの商品
上の検討でわかったことは、
粗利が同じ商品でも値上げによる粗利の変化の仕方は異なる
ということです。
一部の商品の価格の変更をする場合には、慎重な検討を要する、ということができます。
(つづく)